ブレインフォグcolumn

Update:2023.10.15

ブレインフォグとは

ブレインフォグは、頭の中が混雑し、思考や集中力が鈍くなる現象です。情報処理が難しく感じ、記憶や判断に影響を与えることがあります。ストレス、睡眠不足、栄養不良、慢性疲労などが原因で起こることが多く、うつ病や不安障害とも関連があります。脳内の神経伝達物質や炎症の影響も考えられます。

ブレインフォグ

目次

ブレインフォグについて解説

ブレインフォグとは、頭の中がもやもやとした感覚で、集中力や記憶力が低下している状態を指します。また、思考がスムーズに回らず、判断力や意思決定能力が低下していることもあります。主にストレスや睡眠不足、うつ病、不適切な食生活、運動不足、更年期などの原因によって引き起こされます。ブレインフォグを解消するためには、原因に応じた対処が必要です。例えば、ストレスを軽減するためには、リラックスする時間を作ったり、運動することが効果的です。また、十分な睡眠を確保し、健康的な食生活を送ることも大切です。また、脳を刺激することで、ブレインフォグを改善することができます。例えば、脳トレや読書、音楽鑑賞などが効果的です。しかし、長期にわたって続く場合は、医師の診察が必要な場合もあります。

 ブレインフォグとは

「ブレインフォグ」とは、主に頭の中に霧やモヤがかかったように、ぼんやりとしてしまい、考えることや集中することが難しい状態になることを言います。記憶障害や集中力の低下がみられ、それらの症状はうつ病や様々な環境要因が引き起こすと考えられていますが、発症する仕組みなどは未だはっきりと解明されていません。

ブレインフォグは、医学用語として定義されているわけではなく、「脳の霧」という症状だと考えられています。そのため、病気として診断されるわけではないということを知っておきましょう。

しかしながら、ブレインフォグは身体のどこかが正常に機能していない、ということの現れであり、何かしらの原因が隠されている可能性はあります。

今の世の中では、新型コロナウイルス感染症が流行している最中、その後遺症としてブレインフォグに悩まされている人が増えていると言われています。この感染症が流行する以前から、ブレインフォグという言葉はありましたが、新型コロナウイルス感染症の後遺症として、よくメディアでも取り上げられ注目されるようになりました。

とくに、コロナ後遺症として「身体がだるい」「集中力がなくなった」という身体の変化が長引き、社会生活に影響が出てしまう方もよく見受けられます。これらは、慢性的な疲労に関連した症状の一つである場合と、ブレインフォグの発症である場合があり、社会問題になり得る症状だと言えるでしょう。

ブレインフォグの原因

ブレインフォグの原因については、はっきりと詳しいことは分かっていないとされていますが、様々な要因が関係しているのではと考えられています。

新型コロナウイルスのような感染症にかかると、ウイルスと戦うためにタンパク質ができて脳に入り込み、炎症が起きることで脳が正常な機能をしなくなるといった機序が推測されています。

その他に、ホルモンの変化や抗うつ薬などの薬の服用、何かしらの病気など様々な原因がきっかけになり、ブレインフォグの症状が発現するのです。さらには、わたしたちが生活している中でも原因となることがあります。具体的に例をあげて説明していきます。

脳に負荷をかけることが原因

たとえば、スマートフォンやタブレット、パソコン、ゲーム機などの通信機器です。これらは、見ているだけで常に情報がどんどん頭の中に入っていきます。自分が意識していない情報を無意識に目から脳に伝わり、脳に負荷をかけてしまうのです。

スマートフォンを長時間見ている人やパソコンでの作業が多い人、休憩を取らずにゲームをしている人の脳は、実はとても疲れている状態になっています。これらがブレインフォグを引き起こすと考えられています。

社会生活の中で抱えるストレスが原因

また、社会生活の中で職場の人間関係や仕事の負担、家庭における何かしらの問題などで強いストレスを抱える人も多いでしょう。そのストレスや不安な状態が続くと、睡眠不足や食欲不振などを引き起こす可能性があり、ブレインフォグも同時に発症している場合があるのです。ストレス発散のために、喫煙やアルコールの摂りすぎなど不摂生な生活をしてしまうと、さらにブレインフォグが発現するリスクも高まります。

このように、日常生活においてのストレスと脳への負荷などが、積み重なることでブレインフォグは発症しやすいと考えられています。

抗うつ薬の服用が原因

ブレインフォグを発症している人の中には、抗うつ薬を飲んでいる方もいます。抗うつ薬などの薬物治療により、うつ病の症状を改善させる他にも、何かしらの影響を脳に与えているのでしょう。抗うつ薬の服用や、うつ病に対するお薬を減量したときにブレインフォグが見られるという場合もあります。

ただ、ブレインフォグの症状とうつ病の症状は多少重なることが多いため、実際は抗うつ薬の服用や減量によるブレインフォグの発症なのか、それともうつ病の症状が変化しているのかといった判断が難しいと言えます。

このように、ブレインフォグが発症する原因は様々で個人差もあるため、何かしら日常生活に影響が出た場合でないと、病院に足を運ぼうという気持ちにはならないでしょう。

ブレインフォグの特徴や症状

ブレインフォグの症状として、「頭の中に霧やモヤがかかったように、ぼんやりとしてしまい、考えることや集中することが難しい状態」が挙げられます。そして、その症状がどのくらい続くのかは個人差があり、治療が必要なレベルなのか経過観察で大丈夫なレベルかは人によって違う、ということが特徴的です。

また、具体的に症状の特徴を示すと、次のようなものがあります。

  • 集中しようとするほど、頭がぼんやりしてしまう
  • 相手の話が入ってこない スムーズな会話ができない
  • 物事を開始する、行動するのに時間がかかる
  • マルチタスクができない
  • 考えごとをしていても、情報が散らばってまとまらない
  • 頭が冴えない
  • 焦点を合わせることが難しい 物事を覚えたり、思い出したりすことが難しい
  • 考えるのが遅くなった
  • 良い言葉が思いつかない
  • 空間移動ができない

これらの症状は、もちろん人によって出現も症状の程度も様々です。そして、どの症状も「本人の認識、感覚」の問題であり、周りからみたら「怠けている」「だるそうにしている」と、マイナスな印象を与えてしまうことも考えられます。

本人にとっては、頭の中がはっきりと冴えない状態が長期間になり、いつ元の自分に戻れるのか分からず、辛い思いをされている方も多いでしょう。

また、ブレインフォグの症状は出現したり消えたりするため、ある日は明るく元気に過ごせることもあれば、ボーっとして何も考えつかない場合もあります。このように、周りから見て「元気でいつもと変わらない状態」と「何を考えているか分からない、はっきりしない状態」が頻繁に起こることで、社会生活に大きな影響を与えてしまいます。

たとえば、「仕事でミスを連発」「恋人との関係が悪くなる」といったことが起きる可能性があるのです。このような状況が起きると、「仕事に対して責任感がない!辞めてもらう!」「わたし(俺)と一緒にいたくないの?別れましょう!」というように、大変な問題に発展する場合もあるということです。

ブレインフォグの診断

ブレインフォグは、病気として診断できるわけではありません。何かしらの原因によって引き起こされる、症状の一つだと考えられています。そのため、「あなたはブレインフォグという病気です」と伝えられることはありません。

ただし、ブレインフォグを発症していると判断するためには、具体的な症状を医師に伝える必要はあります。なぜなら、ブレインフォグに似た症状を発症する病気と区別する必要があるからです。

たとえば、「物事を覚えたり、思い出したりすることが難しい」「忘れっぽい」といった認知機能の低下が主な症状の場合、ブレインフォグが発症しているのか、それとも認知症やうつ病のような精神疾患が隠されているのか。判断できる情報を医師に伝えることで、より正確に判断できるようになります。

ブレインフォグを引き起こす可能性がある病気は、次のとおりです。

  • 慢性疲労症候群
  • 睡眠障害(不眠症・過眠症)
  • PMS(月経前症候群)・PMDD(月経前不快気分障害)
  • ADHD(注意欠陥多動性障害)
  • ASD(自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群)
  • 適応障害
  • 不安障害
  • うつ病
  • 双極性障害
  • アルコール・薬物依存

これらの病気が隠れている可能性があるため、正確に診断する必要があります。

しかしブレインフォグを発症している場合、もしかしたら症状を伝えること自体が難しい場合もあるでしょう。「良い言葉が思いつかない」「会話がスムーズにできない」といったことも、ブレインフォグの症状の一つだからです。

とにもかくにも医師に症状を伝える場合は、「これは大丈夫だけど、これは問題があると思う」というように具体的に伝えられると良いでしょう。

ブレインフォグの治療法

ブレインフォグの治療法は、状態によって異なります。コロナ後遺症の場合は、原因が明らかになっていないため、確定した治療法がないとは現状です。コロナ後遺症以外の場合に効果がある、主な治療法として考えられているのは、生活習慣の改善とTMS治療(磁気刺激治療)の2つです。

ブレインフォグの原因は、脳の疲労やストレス、睡眠不足や生活習慣の乱れなどです。そのため、食事や睡眠のような生活習慣を見直すことや、脳疲労やストレスなどの負担がかからない生活を送ることが大切になります。

また、症状の中にある「思考力の低下、集中力の低下」などは、脳の神経ネットワークが偏りを引き起こすことで発症していると考えられています。そこで、TMS治療(磁気刺激治療)を施すことで、脳のネットワークを調整しブレインフォグの改善が期待できるのです。

この治療は1回で終わる治療ではなく、医院にもよりますが合計で30回ほどの治療が必要なので、通院する必要はあります。ただ、効果的な治療法としてブレインフォグ以外のうつ病や不安障害などの症状を治療する、薬物を使わない治療法として世界中で普及されている治療法です。

治療を受けたブレインフォグを発症している方は、集中力が少しずつ上がってきたり気持ちの落ち込みがなくなってきたり、精神面での安定を取り戻せたという効果がみられることでしょう。

ブレインフォグと精神疾患の関係性

ブレインフォグと精神疾患には、大きな関係性があります。実際には、ブレインフォグの発症はコロナ感染による後遺症が目立っており、メディアや世間では「コロナうつ」といった曖昧な言葉で知られています。

ブレインフォグが発症し、半年経っても治らない、1年経っても少しも改善しないといったご本人たちは、とても苦しい思いをして生活しています。そのため、「コロナうつ」のように「うつ病」として簡単に済ませるわけにはいきません。

たとえば、初期のアルツハイマー型認知症では、時折ブレインフォグのいづれかの症状が出る場合があります。また、自閉症スペクトラム障害でも同様の症状が見られます。

さらに、抗うつ薬を服用し始めた頃にブレインフォグの症状が出たり、うつ症状が落ち着いてきたために減量したという場合でも症状が現れたりすることがあります。しかしながら、ブレインフォグによる症状の場合は、抗うつ薬による治療には効果が期待できないとされています。ブレインフォグの場合は、抗炎症作用がある薬剤や血の巡りを良くする漢方などが選択されます。

このように、ブレインフォグと精神疾患には同様の症状が発症する場合が多いことが分かります。よって、その患者さんが「ブレインフォグなのか」、それとも他の病気である「うつ病なのか」「アルツハイマー型認知症の初期なのか」「自閉症スペクトラム障害」なのか、はっきりと区別をつけるのが難しいでしょう。

そして、ブレインフォグによって社会生活が良好に送れず、仕事がうまくいかなくなったり恋人と破局することになったり、そのような大きな人生の変化が訪れるケースも多いでしょう。すると、ブレインフォグの発症による様々な変化から、本当のうつ病を引き起こすきっかけとなる可能性もあります。

ブレインフォグは一旦症状が始まると、いつ治るのかも分からない上に薬を使って簡単に治るようなものでもありません。そこで大切なのは、ブレインフォグからうつ病発症への負の連鎖を防ぐということです。

ブレインフォグを取り除くための生活

ブレインフォグは、生活習慣を整えることでも改善する可能性があると言われています。そもそもブレインフォグになりやすい人というのは、次のような方です。

  • 残業が毎日続き、労働時間が長い
  • 仕事の責任や人間関係などのストレスが大きい
  • いつも疲れている状態
  • 睡眠をとっても疲れが取れない
  • 睡眠時間が6時間未満と短い日が続く
  • 趣味や息抜きをする時間がない

これらは、仕事や家庭、自分の時間などの日常と、睡眠や休息といった生活習慣に関することだと分かります。この生活を少しずつ変えていき、心と身体に負担やストレスをかける状態から抜け出すことが大切です。

主な生活習慣の変化とは、「睡眠」「食事」の2つの視点から変えていくことから始めましょう。

睡眠・休息

働いている人の中で、睡眠不足が続く人はブレインフォグになりやすいと考えられています。睡眠不足になる要因のほとんどは仕事の残業です。夜遅くまで残業して帰宅、そのまま何もできずに寝てしまい、また朝早くから出勤。土日や仕事が休みの日まで、出勤しているサラリーマンも多いでしょう。

このような状態では、充分な睡眠時間や少しの休息も取れません。慢性的に疲労がたまり、脳に負担をかける状態になっています。

この状態から抜け出すためには、一番良い方法は「残業をしない」ということですが、個人の力ではどうにもなりません。そこで、残業による私生活への影響を防ぐことが大切になります。

  • 休日のどちらかはゆっくり何も考えずに身体を休める
  • 仕事中はお昼ごはんを食べた、午後の仕事が始まるまで仮眠をとる
  • 帰宅後、睡眠の質が低下しないように、スマホやテレビを見続けない、深呼吸をするなど

こまめに休息を取り、できるだけ睡眠の質を落とさないように意識してみると良いでしょう。

食事・水分

食事の習慣は、脳に影響を与えやすいでしょう。脳の80%以上は、水分でできているといわれており、脳の中で起きている生体反応や化学反応には、その水分が重要な働きをしています。とくに、エネルギーを生み出すために、たくさんの水分が使われます。つまり、脳に十分な水分が行きわたらないと、脳は水が足りないと感じてブレインフォグや疲労感、めまい、錯乱などの精神症状、最悪の場合は脳の萎縮まで起こる可能性があるということになります。

食事に関しても同じことが言えるでしょう。十分な栄養が行きわたった脳は活性化し、精神的な安定や仕事などでも最高のパフォーマンスを発揮できるようになります。ただし、食べ物なら何でも身体に良く、たくさん食べればいいというわけではありません。

食事を摂る上で大切なのは、食事の栄養バランスを考えて食べることです。食生活の関する指針として、厚生労働省、農林水産省、文部科学省が連携し策定したものを、一部ご紹介します。

  1. 食事を楽しみましょう
  2. 1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを
  3. 主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを
  4. ご飯などの穀物をしっかり
  5. 野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて
  6. 食塩や脂肪は控えめに
  7. 適正体重を知り、日々の活動に見合った食事量を

参照元:食生活指針について/厚生労働省ホームページ

基本的な食生活の見直しが、様々な病気やブレインフォグのような症状の発症を抑え、心身の健康につながるのです。

新型コロナウイルス感染症、その他の精神疾患によってブレインフォグが発症する可能性はありますが、医学的に定義されておらず、症状にも個人差があります。たとえば、生活習慣を変えることでブレインフォグの症状が回復する場合は、そのまま様子を見るでしょうが、もし長期間続くようであれば精神疾患にかかっている可能性があります。

つらい症状が続く場合は、しっかり専門医療機関を受診することをおすすめします。