ナルコレプシーcolumn

Update:2023.10.15

ナルコレプシーとは

ナルコレプシーは、昼間の強い眠気と、突然の睡眠発作や筋力喪失(カタプレキシー)が特徴の慢性的な睡眠障害です。脳内の化学物質や遺伝的因子が影響し、昼間の日常生活に支障をきたすことがあります。診断には症状の評価や睡眠検査が用いられ、治療法には刺激剤や抗うつ薬が用いられます。

ナルコレプシー

目次

1.ナルコレプシーとは

ナルコレプシーとは、場所や時間、状況にかかわらず突然強い眠気に襲われて、1日に何度も繰り返す過眠症の病気の一つです。この「突然現れる強い眠気」は、夜にしっかりと睡眠を取っていても関係なく起きること、車や自転車の運転中などの注意が必要な状況でも起きることから、治療が必要な病気であります。

その眠気は、「丸3日間徹夜した後のような、強烈な眠気」と表現されることがあります。会議中や試験中など、通常では考えられない場面で眠り込んでしまうため、周りからは「怠けている」「やる気がない」と誤解を受けることが多くあります。

ナルコレプシーの眠気は、長くても30分以内にはおさまり、目覚めた後はスッキリとした感覚があります。過眠症の症状が重いケースでは、自分自身で「眠い」と感じる前に睡眠発作が起きて眠り込んでしまい、目が覚めた時に気づくという状態になります。

発症年齢は10~20代前半に集中しており、特に14~16歳の中学生に多く現れます。この睡眠障害の影響により、攻撃性が高くなり、情緒面や行動面での問題が生じるケースも多いと言われています。

2.ナルコレプシーの原因とは

ナルコレプシーの発症機序は完全には解明されていませんが、脳内のヒポクレチン(オレキシン)を作り出す神経細胞が働かなくなり、覚醒の維持が困難になることが原因の一つと考えられています。

このヒポクレチン(オレキシン)とは、脳の司令塔である視床下部という場所から分泌されるたんぱく質の一種です。

また、細菌やインフルエンザウイルスなどの感染症が原因で、自己免疫系に何かしらの影響を与えることでナルコレプシーが発症するとも言われています。さらに、頭部に外傷を負うことがきっかけで、脳内のヒポクレチン(オレキシン)の分泌等に関わり発症する可能性も挙げられています。

3.ナルコレプシーの症状とは

人は入眠すると、脳を休ませるノンレム睡眠が深くなり、その90分後に眠りが浅く夢を見るレム睡眠が交互に繰り返しています。ナルコレプシーは、その中でもレム睡眠が不安定に出現してしまう病気です。

ナルコレプシーの症状には、ほとんどの人が起きる「突然現れる強い眠気」の他に、現れる症状がいくつかあります。

①睡眠発作

ナルコレプシーの主な症状は、何ヵ月も続く日中の居眠りです。突然現れる「睡眠発作」のため、自分では制御できない過度の眠気が起きます。よく「引きずりこまれるような」眠気と表現されることがあり、この過度の眠気は、少なくとも3ヵ月間に「週に最低でも3回」起きるとされています。

例えば、次のような場面で睡眠発作が起きることがあります。

  • 試験中
  • 大事な会議中
  • スポーツの試合中
  • 食事中
  • 電話をしている最中
  • 歯の治療を受けているとき
  • 歩いているとき
  • 自転車や車の運転中

このように、一般的には眠りにつかないであろう場面において、突然眠気が現れることが特徴的な病気です。子どもの場合は学業に、大人の場合は仕事や恋人との関係など、生活に大きな影響を与えてしまうことになります。

②情動脱力発作(カタプレキシー)

「情動脱力発作」とは、喜びや驚きなどの喜怒哀楽の感情において、強い情動を受けたことをきっかけに、全身の力が抜けてしまう発作です。膝がガクンとしたり、ひどい時は立っていられなくなったりします。呂律が回らなくなる場合もあります。重症の場合は意識や記憶がなくなり、朦朧(もうろう)とするケースもあります。

この脱力発作は数分間続き、はっきりとした意識があるために、発作が起きていることを自分でも自覚しています。

③入眠時幻覚

「入眠時幻覚」は寝入りばなからレム睡眠となり、怖い夢を見てしまうことが多く、本当に体験しているとの同じような感覚で現実感のある夢を見ます。この夢は現実との区別が難しく、幻覚と判断されて統合失調症のような精神疾患と間違われてしまう場合があります。

④睡眠麻痺

「睡眠麻痺」とは、いわゆる金縛りのことです。入眠直後、はっきりとした意識があるのにもかかわらず身体を動かすことができない状態のことを言います。金縛りは健康な人でも起きるもので、レム睡眠の崩れが原因とされています。

入眠時幻覚や睡眠麻痺を体験したナルコレプシーの子どもは、一人で眠ることを怖がる様子が見られます。

⑤その他・合併症

ナルコレプシーの患者さんは夜の睡眠の質が悪く、夜間に目が覚めやすい、熟睡感が無いといった夜間の熟眠障害が起きることもしばしばあります。

また、ナルコレプシーにより日常生活に大きな影響を与えた場合、集中力の低下ややる気の低下といった抑うつ状態になる可能性が高くなります。攻撃的、衝動的になることで注意欠陥多動性障害を疑うケースも出てきます。他にも、頭重感や肥満、糖尿病などの疾患を合併しやすいと考えられています。

さらには突然の眠気が、自転車に乗っている時や車の運転中に起きた場合は、重大な事故を引き起こし命を落としかねない状況になる場合もあるでしょう。

4.ナルコレプシーの診断・検査

ナルコレプシーは、過眠症の一つで睡眠障害です。精神神経科や神経内科が専門とされています。

前述した「突然襲う過度の眠気」「情動脱力発作」「入眠時幻覚」「睡眠麻痺」の症状がナルコレプシーによるものか、脳の障害や精神疾患による症状なのかを診断することから始めます。

睡眠麻痺やナルコレプシーの幻覚のような症状は、ただの睡眠不足でも、睡眠時無呼吸症候群やうつ病の人でも起きることがあります。そして通常は、ナルコレプシーの原因となる異常というものは、CTやMRIのような画像検査では分かりません。

そのため、睡眠検査室で詳しい検査を行う必要があります。睡眠検査室で行う検査は、まずは一晩かけて「睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行い、次の日にPSGと同様の検査を数時間おきに20分行う、反復睡眠潜時検査(MSLT)を実施します。

この検査で記録するのは、次のような項目です。

  • 脳波
  • 眼球運動
  • 筋電図
  • 呼吸運動
  • 心電図
  • 酸素飽和度
  • 四肢の動き

また、日中の眠気がどの程度の強さなのかを測定するために覚醒維持検査を行い、患者さんがどれくらいの時間起きていられるのか調べます。これらの睡眠に関わる検査を行った上で、別の睡眠障害の可能性や他の疾患の合併などを確かめることになります。

その他の検査として、脳脊髄液中にあるオレキシンA濃度を測定する検査を行う場合があります。腰から細い針を刺して、脳脊髄液を採取する検査です。特に、情動脱力発作を伴うナルコレプシーの患者さんの場合は、この検査でオレキシンAが極度に減少していることが多いのです。

5.ナルコレプシーの治療

根本的に治癒するための治療方法は、未だ確立されていませんが、主に「生活習慣の改善」と「薬物治療」の2つを取り入れることで、症状を抑えて不自由ない生活を送ることが可能になります。

①生活習慣の改善

生活習慣の改善として、まずはしっかりと睡眠習慣を確立することが重要です。毎晩できるかぎり同じ時刻に寝て、同じ時刻に起きるようにします。毎日の睡眠リズムを日記にして、書き留めておくことがおすすめです。

夜に十分な睡眠を確保するように習慣づけて、毎日同じ時間に30分未満の仮眠を取ることで、軽度のナルコレプシーであれば症状の改善がみられるでしょう。

②薬物治療

患者さんの症状や合併症に分けて、薬物治療を行います。

 

治療の特徴

睡眠発作

覚醒作用のある、精神賦活薬を使用する

情動脱力発作、睡眠麻痺、入眠時幻覚

症状の軽減する作用がある、抗うつ薬を使用する

夜間の睡眠障害

熟睡感が得られない、不眠が強い場合は睡眠導入剤を使用する

また、注意欠陥多動性障害(ADHD)が背景にある場合は、コンサータやストラテラといった薬物治療で効果が期待できると言われています。

ナルコレプシーと診断された後の生活として大切なことは、次の2つです。

  • 規則正しい生活を送ること
  • 薬を飲んで1日の眠気をコントロールすること

長期的に治療が必要になることは多い病気ですが、生活習慣の改善と適切な薬物治療によって症状を抑えることができます。生活のしやすさを手に入れるために、根気よく付き合っていきましょう。