ミルタザピン(商品名:リフレックス/レメロン)についてcolumn

Update:2022.11.04

ミルタザピン(商品名:リフレックス/レメロン)について

目次

ミルタザピン(商品名:リフレックス/レメロン)とは

 ミルタザピンはリフレックスやレメロンという商品名で販売されているノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ剤(NaSSA)に分類されるお薬です。1994年にオランダで初めて販売された後、2009年に日本でも販売が開始され、現在では世界数十カ国で広く使用されています。Meiji Seika ファルマ株式会社とMSD株式会社という2つの企業が共同で開発したお薬であるため、それぞれリフレックスとレメロンという名称で販売されていますが、どちらも有効成分がミルタザピンの全く同じお薬です。また、現在は多くのジェネリック医薬品も販売されており、その場合は商品名に「ミルタザピン」とつきます(以降「ミルタザピン」にて統一します) 。

 ノルアドレナリンやセロトニンという物質は、神経伝達物質といって特定の神経に働きかけ、不安や痛みといった感情/感覚を調節する働きがあります。ノルアドレナリンによって働きが調節される神経をノルアドレナリン神経系、セロトニンによって働きが調節される神経をセロトニン神経系といいます。うつ病の患者さんは、このノルアドレナリン神経系やセロトニン神経系の働きが通常よりも弱っていることから活力の低下や不安症状が生じるとされています。抗うつ薬にはいくつか種類がありますが、そのいずれもがノルアドレナリン神経系、セロトニン神経系に働きかけることで症状を改善していきます。現時点では、うつ症状を改善させる詳細なメカニズムはまだはっきりと分かってはいませんが、それら神経系の活動を高めることで徐々に脳内に変化が生じ、結果的にうつ症状が改善していくと考えられています。

ミルタザピンの作用について

 神経伝達物質であるノルアドレナリンやセロトニンは、神経細胞から放出された後に色々な受容体に結合することで神経の働きを高めたり弱めたりする働きがあります。うつ病の患者さんは、この神経伝達物質の放出量が通常よりも少ないことが分かっています。ミルタザピンは、ノルアドレナリンとセロトニンの神経細胞からの放出量を増やし、かつ、うつ症状の改善に重要な受容体を刺激する作用があります。この作用は他の抗うつ薬とは異なるミルタザピン唯一の作用メカニズムです。ミルタザピンは症状改善効果が他の抗うつ薬と比べて早いとされており、この作用メカニズムの違いが速やかな効果発現を生み出していると考えられています。

 うつ病といっても不安、活力の低下、不眠など患者さんによって症状は様々です。抗うつ薬にはいくつか種類があり、それらは作用メカニズムの違いから特徴もわずかに異なります。例えばSSRI(商品名:パキシルやルボックスなど)やSNRI(商品名:トレドミンやサインバルタなど)はいずれのうつ症状に対しても優れた改善効果を有しますが、SNRIの方が活力低下に対して効果が優れているという報告があります。また、NaSSAであるミルタザピンは、効果発現の速さに加えて不眠に対して優れた効果を有します。このようにお薬の特徴を踏まえて患者さんの症状や状態から最適なお薬を選択します。

 一般的に抗うつ薬は数か月にわたりお薬を服用する必要があり、突然服用を中止してしまうと症状の悪化や副作用発現といったデメリットが生じる可能性があります。定期的に医師、薬剤師に症状や状態を相談し、用法用量を守って継続的に服用を続けることが重要です。

ミルタザピンの服用方法について

 ミルタザピンには以下の用量が販売されています。

  •  15mg錠
  •  30mg錠

 1日15mgの服用から開始します。増量する場合は、1週間以上の間隔をあけて15㎎ずつ増量しますが、1日の用量が45mgを超えてはいけません。基本的には患者さんの状態を見ながら1日1回15mg~30mgを寝る前に服用します。

ミルタザピンの注意点について

 ミルタザピンの開発期間中に見られた副作用は以下の通りです。

  • 傾眠(眠気):50%
  • 口渇(口の渇き):6%
  • 倦怠感(だるさ):2%
  • 便秘:9%

ミルタザピンは他の抗うつ薬と比較すると眠気が生じやすいお薬です。そのため、服用は日中の活動時ではなく寝る前に服用するようにしてください。ミルタザピンの服用期間中は自動車など危険を伴う運転はなるべく控えるようにしましょう。

一般的にこれらの副作用はお薬の服用を始めた初期に生じやすく、継続して服用すると徐々に収まってくることが多いですが、副作用が重い場合などは自分で中断するのではなく医師・薬剤師に相談してください。突然お薬を中断することで不安やめまいなどの離脱症状が発現することが報告されています。

服用できない/注意が必要な患者さん

セレギリン(商品名:エフピー)やラサギリンメシル酸塩(商品名:アジレクト)などのモノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤を服用中もしくは服用中止後2週間以内の患者さんはミルタザピンを服用することができません。また、その他にも水虫治療薬や胃薬などミルタザピンとの併用に注意が必要なお薬もあります。現在服用しているお薬がある場合は医師・薬剤師に相談するようにしてください。

高齢者の患者さんは一般的に肝臓や腎臓の働きが弱まっていることが多くお薬の作用や副作用が強く発現することも多いので注意が必要です。また、妊娠中、授乳中の患者さんは動物実験にて胎児へ影響が生じること、母乳中にミルタザピンが移行することが分かっているため、医師の判断のもと服用してください。