ビバンセとはcolumn

Update:2022.03.22

ビバンセとは

目次

ADHDとは?

ADHDは、日本語で「注意欠陥・多動性障害」ともいわれています。 脳の一部の機能の発達・成熟に偏りが生じた結果、それが症状として表れてしまう発達障害の一種です。

なにか一つに集中して注意を配ることが難しいために 

  • 忘れものが多い
  • 物をなくしやすい
  • 落ち着きがない
  • 物事に優先順位をつけて行動することが苦手
  • いつも行動がギリギリ
  • 衝動的な行動が多い 

といった特徴を抱えていることが多くみられます。 

こういった行動特性から、周囲からは「怠けもの」「何度注意しても間違いを繰り返す」「ちょっと変わってる」といった見方をされることがあります。
ADHDを抱えている人は、周囲の理解がなかなか得られずに、日常生活を送るうえでさまざまな困難や生きづらさに悩みを抱えてしまうことがあります。
ADHDの症状は、脳内の神経伝達物質である「ドパミン」や「ノルアドレナリン」が大きく関与しているといわれています。
ドパミンやノルアドレナリンは、脳の中で「注意や感情などのコントロール」にとても重要な役割を担っています。

ADHDは、これらの重要な神経伝達物質が通常よりも不足していたり、神経伝達自体に異常が生じていたりすることで、注意欠陥・多動の症状として現れる発達障害であるとされています。

今回は、このドパミンとノルアドレナリンの働きを活性化させることで、ADHDの症状を改善する働きをもつ治療薬の一つ「ビバンセ」について解説していきます。

ADHD治療薬:ビバンセ®(リスデキサンフェタミン)ビバンセとは

ビバンセは6-18歳の小児のADHDに対して承認された国内で最も新しいADHD治療薬です。

ADHDの原因は、脳内のドパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の不足にあるとされていますが、このドパミンやノルアドレナリンは脳内に分泌された後、しばらく経つと徐々に再度脳内に吸収されていきます。 

ビバンセは「プロドラッグ」という性質を持っています。これは、体内に吸収された後に別の成分に変化することで本来の薬効を発揮するお薬です。ビバンセは、吸収された後に血液中でアンフェタミンに変化します。このアンフェタミンは脳の中枢神経を刺激して、脳内のドパミンの再取り込み口を塞いでドパミンの濃度を高めることでADHDの症状を改善します。 

アンフェタミンは「覚せい剤」の一種です。そのため、この名前を聞くとあまりいいイメージがないかもしれません。でもビバンセは、アンフェタミンがプロドラッグ化されていることで血液中で急激に濃度が上がらずに、丁度いい濃度で長時間効果が続くように設計されています。 

薬物依存や乱用のリスクは、体内でアンフェタミンの血中濃度が急激に上がったり下がっていくときに高まります。つまり、プロドラッグとなったビバンセの濃度変化の緩やかさは、アンフェタミンがもつ依存性のリスクを改善したお薬であると言えます。 

ビバンセと同じようにADHDに対して承認を受けた治療薬には、国内で初の治療薬「コンサータ」があります。 
コンサータは脳内のドパミンとノルアドレナリンの再吸収を抑えて濃度を増加させることで、神経伝達物質の働きを活性化して、不注意・多動性・衝動性といったADHDの症状を改善するとされています。 

ビバンセは、コンサータのこの作用に加えてドパミンとノルアドレナリンの分泌促進効果をもった新しいタイプの治療薬です。
脳内のドパミンやノルアドレナリンの濃度を増やすもう1つの機序を持つことで、より多くの情報を伝達できるようになり、覚えられる情報の量や、集中力も高まると考えられます。 

さらにビバンセには、セロトニンの増加作用があるとも言われています。セロトニンは人間の衝動性に関わっており、このビバンセのセロトニン増加作用はADHDの衝動性の改善にも効果が期待されています。

ビバンセはこうした複数の作用機序をもつ結果、不注意・多動性・衝動性の症状改善に繋がっていると考えられています。 

ADHDの治療目標は、単に不注意、多動性、衝動性を抑えることではありません。 

  • 治療を行って本人が自分を理解し、自身の行動をコントロールできるようになること
  • 周囲の環境が改善して自信を取り戻せるようになること
  • それによって生きにくさが改善され、充実した生活・社会生活が送れること

ビバンセは、こうした自分と周囲を取り巻く環境の問題を解決する、きっかけ作りになる治療薬でもあるのです。

飲み方

ビバンセは1日1回、朝に内服するお薬です。 

内服してから効果が約10時間ほど持続するように設計されています。朝に学校に行く前に内服することで、日中は追加でお薬を飲まずに学校生活を送ることが出来る「長時間作用型」と呼ばれるタイプのお薬となっています。

副作用

  • 消化器症状(食欲減退、吐き気、嘔吐など)
    ドパミンやノルアドレナリンは交感神経(興奮したり緊張するときに働く神経)の働きを活発にします。ビバンセは特に、お腹が空きにくくなる症状が現れることがあります。
    特に、ビバンセは成長期のお子さんが対象のお薬です。
    食欲が出ないからと言って食事を少なくしてしまうと、子供の成長期に満足な成長が得られなくなってしまう可能性があります。毎日の食事量や必要な栄養素が不足しないように食事の回数を増やしたりと工夫が必要です。
  • 循環器症状(動悸、血圧変動など)
    交感神経の働きが活発になりすぎてしまうと、緊張しているときのように胸がドキドキしたり、心拍数が上がった影響で血圧が上昇することがあります。一過性なら問題ありませんが、継続して感じるようであれば医師への相談が必要です。
  • 神経精神系症状(頭痛、めまい、不眠など)
    飲み始めの初期症状として、頭痛やめまいがしたり、薬の効果が強く出て目がさえて寝つきにくくなってしまうことがあります。こうした症状は内服開始から暫くすると治まってくることが多いです。持続する場合には、早めに医師に相談するようにしましょう。

服用上の注意点

服用上の注意点は大きく分けて2つあります。 

  1. 夜に寝られなくなってしまうため、お昼以降に飲んではいけない
  2. 病院と薬局に行くときには「患者カード」を忘れない

順番に説明していきます。

①夜に寝られなくなってしまうため、お昼以降に飲んではいけない

ビバンセは、内服してから効果が約10時間持続する長時間作用型のお薬です。
そのため、朝に飲み忘れたからといってお昼以降に飲んでしまうと、就寝時間になっても眠気がなかなか起きずに、自分の意志とは逆に眠ることが出来ず、睡眠不足の原因となってしまうことがあります。飲み忘れには注意しましょう。
万が一、飲み忘れてしまった場合には思い出したときにすぐ内服して、もしお昼を過ぎていたらその日は原則飲まずに、翌日からいつも通り内服を再開するのが良いと思います。

②病院と薬局に行くときには「患者カード」を忘れない

ビバンセは覚せい剤のプロドラッグであるということから、医薬品の厳しい流通管理が義務づけられています。そのため、ビバンセを扱うことが出来る医師や薬剤師は「ADHD適正流通管理システム」という国が認めたシステムへの登録が必須とされています。
ビバンセの不適正な使用を防ぐために、患者さんも同様に登録制となっています。登録の際には身分証明、薬物乱用歴の有無、第三者からの情報もしくは情報源(通知表、連絡帳、母子手帳等。20歳未満の方は保護者の同伴、署名)が必要であり、登録された情報は個人情報保護法に準じて管理されることになっています。
そして、登録後には上記のような「患者カード」が発行されることになっています。

このカードを忘れてしまうと、すぐにお薬を出してもらえなかったり、色んな手続きをしてカードの再発行をしなければなりません。患者カードの紛失に注意して、受診時にはお薬手帳と併せて忘れず持参するようにしましょう。

参考文献

処方薬辞典 https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf827c.html
PMDA ビバンセ インタビューフォーム https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/1179059M1024_1_06/